ため池管理者のみなさまへ

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【ラジトピ】栄養塩不足・温暖化で危機 「兵庫のり」を救う“かいぼり”とは? 農業者と協働実施、映画にも

2022年10月20日

 おむすびやのり巻き、つくだ煮など、ふだんなにげなく食べている「のり」。近年、環境変化によってさまざまな影響を受けているという。
 「関西の朝の顔」として、テレビなどで活躍する気象予報士・防災士の正木明がパーソナリティーを務めるラジオ番組『正木明の地球にいいこと』(ラジオ関西、月曜午後1時〜。アシスタント:荻野恵美子)9月5日放送回では、兵庫のり養殖家かつ森漁業協同組合(兵庫県淡路市久留麻)の代表理事組合長・森吉秀さんをゲストに迎え、くわしい話を聞いた。
 のり養殖・生産をかなりシンプルに説明すると、「胞子から芽を育て、摘みとったものを、ふだん食べる“のり”の状態に加工する」こと。
 森さんの養殖場では、9月25日頃から陸上に設置した水車でのり網に胞子をつけ、のりの苗をつくる。この工程を採苗(さいびょう)と呼ぶ。10月に入ると採苗した網をいったん引き上げ冷凍保管し、海水温度が23度以下になったところで海に戻す。水中で20〜25日かけて育苗(いくびょう)、5ミリ〜1センチほどになればふたたび網を引き上げ冷凍保管する。

 一見、緻密なスケジュール管理のうえ養殖は行われているものの……
 「通常だと育苗は10月1日頃実施するのですが、近年では10月25日頃と後倒しになっています」(森さん)
 時期に20日以上のずれが生じるようになったのは、温暖化のために海水温が下がらないことが原因だという。
 11月下旬〜12月初旬、海水温が18度以下になれば海苔網を海へ戻す。そして、苗から海苔が成長したら摘みとり作業へ入るのである。
 われわれの食卓にならぶ「のり」へ加工されはじめるのは12月15日頃。じつに地道な作業を経て養殖・生産されているのだが、森さんいわく、温暖化の影響をフォローするため工程の複雑化は避けられないとのこと。

 また、漁場改善対策として行われた「ため池のかいぼり」についても当番組内で話題となった。
 「かいぼり」とはため池の水を抜き、堆積した腐葉土を流し出す維持管理作業のことである。体積しすぎた腐葉土は、池の貯水量の低下や台風や大雨のさいに決壊をひき起こしてしまう。
 それを回避するため、かいぼりで川に出された腐葉土はやがて海へ流れこむ。これが海にとっては貴重な「肥料」なのだ。
 この十数年、のりの色落ちが深刻化しているのはご存じだろうか? リンや窒素などの栄養塩不足が原因とされ、これらの栄養素を豊富に含んだ腐葉土の不足が理由のひとつに挙げられる。農業者の高齢化や農業人口の減少により、激減したかいぼりの実施数にも関係しているそうだ。
 状況を重く見た森漁業協同組合は農業者と協力、ため池のかいぼりに兵庫県内でいちはやく着手し、漁場改善に力を注いでいる。
 この森漁業協同組合のかいぼりプロジェクトは、「環境保全」や「魚食文化の大切さ」を優先課題として取り組む内容の映画『種まく旅人 くにうみの郷』(2015年5月30日公開)のモデルとなった。ロケ地として森漁業協同組合の施設が使用され、組合員の協力のもと映画は完成した。
 「出演者、組合員、スタッフ……和気あいあいとした楽しい現場でした。年齢や立場などそれぞれに違いましたが、環境にとって大切なことを共有できたと思います」(森さん)
 森さんは「海洋環境の重要さ」についての啓もう活動においても積極的だ。たとえば、保育所・小学校対象に、地引網や底引網の体験会・のり加工場の見学を行っている。子どもたちはみんな興味しんしんで参加しているのだそう。

 番組の最後、森さんは笑顔で語った。
 「兵庫県は大阪湾・瀬戸内海・日本海と、海に囲まれた自然豊かなところです。海をきっかけとして、兵庫のりや漁業に関心を持っていただければ、より“地産地消”への意欲も高まり、みなさんの食卓も豊かになると信じています!」(森さん)

■dmenuニュース
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/jocr/region/jocr-raditop-456496?fbclid=IwAR31txp9yhbPsAO5vMhCRLgAd4NhT6qwcdZ1eR-JaaqL1VN93-zeRBQXlic