【災害対策】できることはすぐに 福島民報 (8月10日)
2022年08月10日
先週、隣県の山形、新潟両県で大雨の最大警戒レベル5に当たる特別警報が出た。断続的に豪雨が降り注ぐ線状降水帯も相次いで発生した。県内も会津地方を中心に記録的な大雨に見舞われた。いつ来てもおかしくない災害への備えの重要さを改めて認識し、事前にできることを今すぐ始めよう。
県内では、降り始めから24時間の雨量が北塩原村、喜多方市で観測史上最大となった。西会津町付近では短時間に約100ミリの降水量が観測されたとして、記録的短時間大雨情報が出た。喜多方市では、磐越西線の橋が崩落した。復旧作業は長期化しそうだ。これまでに経験したことのないような雨量が被害を拡大させている。
2019年の東日本台風の災害を踏まえ、国と県、市町村は県内すべての一級河川、五つの二級河川で「流域治水プロジェクト」を策定した。(1)氾濫をできるだけ防ぐ・減らす(2)被害対象を減少させる(3)被害の軽減、早期復旧・復興の三つの視点を掲げる。中でも氾濫をできるだけ防ぐ・減らすに重点を置く。
田んぼダムと呼ばれる水田やため池などの雨水貯留、ダムの事前放流、遊水池の整備など、大雨が降る前の対応が進む。二日に開かれた県河川審議会では、阿武隈川などの流域治水の進捗状況が示された。席上、委員の高松義行本宮市長は「流域自治体はイコールパートナーとして連携しなければならない」と全体で取り組む必要性を強調した。
高松市長の発言は、被害が発生した箇所だけでなく、流域全体としてどのような対策や工夫をすれば、被害軽減につながるのかを指摘している。今回の大雨についても詳細な分析と検証を進め、今後に生かすべきだ。プロジェクトは向こう30年の計画で、息が長い。線状降水帯が頻繁に確認される現状を踏まえ、プロジェクト自体の柔軟な見直しも求めたい。
日頃から防災意識を高めようと福島民報社は「365日の防災」を始めた。毎日の紙面に防災欄を設け、災害に対する心構えや通常時から準備しておきたい備品などをアドバイスしている。大雨の報道が続いた5日にはハザードマップの事前確認、6日には雨がやんだ後の警戒の重要性を記した。
自治体と住民が一体となって、日々、改善していく姿勢を持ち続けたい。東日本大震災を経験し、度重なる地震や水害から立ち上がってきた本県だからこそ日本一の防災意識を持った防災先進地になれるはずだ。(安斎康史)