【朝日新聞デジタル】ため池防災システム 豪雨や地震で危険度予測
2021年09月07日
【茨城】地震や豪雨の際、ため池が決壊する危険度を予測するシステムを農研機構(つくば市)が開発した。防災関係者に迅速に情報を伝えることで人的被害を減らすことを目指す。
農研機構によると、ため池は全国に約16万カ所、うち茨城県内には約1300カ所ある。地震や豪雨で決壊することもあり、東日本大震災では福島県の藤沼湖が決壊し、8人が犠牲となった。2018年の西日本豪雨では広島県のため池が決壊して死者が出ている。
システムは、ため池に決壊の恐れがあるとき、下流域に住む人に対して、自治体が早めに避難を促せるように開発された。昨年4月から運用が始まっている。
地震のときは揺れの情報を元に、ため池決壊の危険度を「危険(赤)」「注意(黄)」「安全(青)」の3段階に分けて、発生から30分以内に地図に表示する。豪雨のときは、現在の時刻から15時間後までの決壊危険度を予測して地図に表示する。危険度の情報は関係自治体に提供し、ため池の緊急点検や決壊防止対策、住民への避難呼びかけなどに役立ててもらう。
ただ自治体によっては緊急時に数百のため池の点検が必要となり、担当者だけではカバーしきれない恐れもある。そこで、近くに住む農家など、ため池の管理者が状況を調べてスマホから入力できる仕組みも今年6月から導入された。自治体の手が足りない分を補えると期待される。
システムの開発を担当した農研機構農村工学研究部門の堀俊和グループ長(54)は「災害時に自治体とため池の管理者が連携して緊急点検することで、速やかに状況を把握して減災につながれば」と話す。(谷口哲雄)