ため池管理者のみなさまへ

ため池管理者のみなさまへ

「ため池保全県民運動」この人に聞く

2020年12月14日

今回の「この人に聞く」は、ため池の景観の保全などの研究に携わる明石工業高等専門学校の工藤和美教授、ボランティアでため池の清掃活動を行っている「明石ため池清掃志隊」の赤木紘代表、県の農政を所管する兵庫県農政環境部農林水産局の萬谷信弘局長に、ため池の「適正な管理」、「環境と景観保全」、「次世代を担う人づくり」について、お考えを伺いました。

日 時:令和2年10月23日(金)15:30~17:00
場 所:兵庫県土地改良事業団体連合会 役員室
参加者: 工藤和美(明石工業高等専門学校 建築学科教授)
    赤木 紘(明石ため池清掃志隊 代表)
    萬谷信弘(兵庫県農政環境部農林水産局長)
 

明石ため池清掃志隊について

司会:明石ため池清掃志隊が結成されたきっかけは何でしょうか?

赤木:最初は、明石市の農水産課の内田さんのアイディアでスタートしました。”隊”の募集があって僕が応募の第1号だったという流れです。やりませんかという流れの中で、じゃぁやりますということで始まったのがきっかけです。僕が住んでいたところが17号池の近所なので横に魚住小学校がありまして、いつも草ぼうぼうであまりよくない。市に電話して、なんとか草刈りしてくれと言ったわけです。そんなやりとりがあったものですから、みんなで草刈りはできないとしても、清掃であればできますからという事で手を挙げたわけです。それ以前から海岸とかちょこちょこ掃除をやっていたものですから、なんとなく。子供の頃、ため池に接した経験があったかもんですから全然抵抗がなかったです。

司会:清掃志隊(したい)とネーミングがいい感じですね。

赤木:良く言われます。”志”という言葉を入れているんですね。それはあくまでも内田さんのネーミングですから。私はあんまり”志”は入ってないです。(笑)

萬谷:普段はごみを拾ったりとかするのですか?

赤木:そうですね

萬谷:草刈りとかは?

赤木:僕の周りはやらないです。あくまでもクリーンキャンペーンということで。クリーンキャンペーンの前段階で水利組合とか農家さんが草刈りをされるということです。我々が行く前に草刈りをされて、そのあと我々が行くという感じですね。

萬谷:一緒になってやるという感じですか?

赤木:そうですね。農家さんはあまりゴミを拾うということはされなくて。あくまでも草刈りが主ですね。クリーンキャンペーンの場合はそうです。

萬谷:年に何回されていますか?

赤木:明石で一応、20回から25回ぐらいまで予定がありますね。誰でもいつでもという事で。我々みたいにいつも行く人と、ご近所の場合に行く人と大体分かれてやっています。

司会:池の数で言ったら何か所くらいありますか?

赤木:明石の場合は池の数は100ちょっと。ため池の協議会が大体15~6あります。

工藤:明石市のホームページを見ると今年のスケジュール出ていますね。

萬谷:それで近所の人がホームページを見て、明日やったら行こうかなって、来られたりするのですか。

赤木:最近は池の関係する近所に清掃を呼びかけるチラシを配っているところもあります。ため池協議会、水利組合さんプラス自治会さん、あるいは一般の方も一緒に協議会を作っていますので予定が出れば会の中で回覧されるということです。中には高年クラブとかPTAとか子供会とかが何人か団体で出てこられる所もあります。清水新池なんかは100人超える所もあります。協議会に団体で入っているところは、招集がかかるみたいです。

ため池の適正な管理について

司会:県ではため池の促進に向けて「ため池保全県民運動」を平成28年度から始めていますが、その中で3つのテーマ(「まもる」適正な管理、「いかす」多面的機能の発揮の促進、「つなぐ」次世代への継承)でお話してもらいたいと考えています。まず、ため池の適正な管理。農業者の減少によって管理体制の維持強化が急務と考えていますけれども、このことについて3人の方の意見をお願いします。

萬谷:行政なので法律に従って防災重点ため池の改修や、管理されてないため池の廃止を進めています。ため池は利水者の方に管理してもらう事が第一なので届出もしてもらわないといけませんし、管理者の方が管理しやすいような「ため池管理マニュアル」を作って講習会などで周知しています。ため池保全サポートセンターを本土と淡路島に設置していますので、管理者の方のため池に係る様々なお悩み相談に乗るというようなことを行政としてしています。

工藤:窓口ができたりして、行政も一緒にやっていこうという体制ができてすごくわかりやすくなって、進んできたかなとは思っています。一緒にやっていこうという気持ちがいろんな形で伝わりやすくはなっていっているのかなというふうに思っています。ただ、研究や学生の活動と関わっていく中で、世代交代というのは非常に難しいと思っていて、制度だけではそんなに簡単に答えが出ない課題だろうなと思っています。いろんな形で取り組んでいくしかないと思います。特に難しいのは、新しく管理する人が現れたとしても、守ってきたすべてのものを継承していくというのは難しくて、水の利用の仕方が、ため池独特で複雑だという背景があるので、私も研究させていただいていて、水利の方のお話の意味が分かるようになるのに3年ぐらいかかりました。ツメっていう栓がなんなのか、ちゃんと映像で分かるようになるとか、例えばですが、水源の呼び方とか、池を守る方の言い方も場所によっていろんな言い方があります。ちょっと独特な文化というのも本当は一緒に守って継承していくことで水を守って使うということが長い歴史の中でベースにできてきた仕組みなので、そういう部分も理想としては継承できていけたらと思っています。やはり大きな課題だろうなと。

赤木:池の管理については、正直言ってもう、最近でこそ、「ため池だより」を読むと、サポートを含めたため池管理が必要なのがわかるようになっていますけれども、やはり我々の活動自体の中で、皆さんで池の管理の云々という事はなかったです。そういう点で最近気になるのは、やはり3年ほど前に大雨の時にため池の決壊があったと思うのですけれども、ああいうのを見聞きすると、大変身近なんだなぁということがありますので、逆に言うと、ご専門の水利の方にお任せするのじゃなくて、我々住んでいる住民もやはり関心を持つということだろうと思うのです。それが一つです。結局大変な部分の管理になりますので、キーワードとしては、みんなが関わる、それがないとやっぱりもう任せてしまうという感じになってしまいますから。我々の生活の中にため池があるのだよというようなことです。そのためには例えば今、ため池協議会がありますから、その場合に個人が入りやすいような、個人が入れば、ため池協議会の中で池のことを何か説明してもらえるような機会があるのではなかろうかと。水利組合に入れなくとも、個人としてため池協議会の方に入れるといいのじゃないかなというのが一つあります。それから、今、我々の住宅の中で空き家に関する法律があるようですが、ため池の管理と空き家の管理が似ているんじゃないかと思ったりするんですよ。特に淡路島の方では、結構池が多いけど、管理がいき届かない池があるとか。その辺も何か共通性があれば方法がないのかなと。そこは行政の方が考えてもらったらと思ったりしますが。

司会:局長の方からは、管理者講習会とかサポートセンターとか届出の話がありました。ため池の管理者の支援みたいなことなのですけれども、農業者だけでなく多様な主体が参画するため池協議会を設立してみんなで保全していきましょうということで、明石のため池清掃志隊であったり、明石高専さんも参画していただいて、まさしくそういうことが求められているのかなと。地元にとっても非常に心強い存在だなと思っておりまして、今後も引き続きご協力をお願いしたいと思っております。

萬谷:僕は農学職で農業の方なのですけれども、農業って水が無いとできないんですよね。そういう意味ではため池ってなんとなくそういう目で見ると、単純に水と。今赤木さんがおっしゃられたように地域の人にとって、ため池は本来の目的から言うと、水を田んぼに入れる施設だと思うのですよね。そういうところに地域の人が、どうしたら関われるようになるのかなと思うんですよね。

工藤:そうですね。本当に難しい問題だと思うんですけれども。どう参加するかという事ですが、色んな人が工夫していくしかないんですけれど、やはり、『まちづくり』と同じかなと思っていて、建築分野で言われる、”参加のはしご”という。どれだけ自分の住んでいる町や地域に責任を持って住んでいけるかということは、非常に大事なことで、やはり赤木さんが言われたように、してもらえるものと思って文句を言うとか、お願いをする、やってもらえるという仕組みを作ってしまうことは、非常に危険だと。社会的に良くないことだということは、まちづくりとしてもよく言われていることです。やはり、自分たちが関わって使って、それを維持管理することにも参加して、守っていくことで自分たちがそこに帰属していく。自分たちの場所であって自分たちの町なのだと。それがひいては、大きな税制の節約にまでつながるという事を言われていて、特にため池は、環境や災害とも直結するものですので、よりその意識を皆さんが持って、やはり自分たちが住んでいる地域の環境や、水環境というようなものに責任を持って関わって住んでいかなきゃいけない、地域性を少しずつでも育んでいけたらなぁと思っています。やはり具体的にどうしていくかということは、一つ一つやれることをやってみて、トライ&エラーの積み重ねだと思うのですが、ため池協議会に水利じゃなくても入れるようにして、楽しいこともして、少しずつやっていくしかないのかなと思う。

萬谷:愛着というか、赤木さんも清掃しておられたら愛着がわいてくるというか、そんなのもあるのかなと思ってみたりするのですが。

赤木:もう習慣みたいになっています。愛着は確かにありますね。ちょっと話が変わるかもしれませんけれども、一つは、地域におけるため池というと、危険ですよ、危ないですよ、子供だけで行ったらだめですよっていう表示があるわけですね。この辺が子供らにとってちょっと取りつきにくいという面があると思う。早い段階で子供たちが体験することで池なんてどういうものかがわかっておれば、例えばそれが何十年経った後に、仮に地元に帰ってきた場合に、リタイアした後にもため池保全に参加できるんじゃないかという可能性みたいなものはあるとは思うんですけれども、今のため池をどうするかということになると、難しいですね。今住んでいる人が頑張らないことには。だから、ため池協議会というようなゆるやかなもの以外にもう少し、専門性を持ったような形があるといいんかなと思ったりします。水利さんという専門の部分と協議会というクリーンキャンペーンしたり、花見したりする人、その中間みたいなところに、何か仕組みが、わかりませんけど。だから、ため池の管理に大変なんですよということで、じゃあ僕らみたいな素人が、ノコノコ出て行ってできるわけではないと思いますので、それには一つ親しみやすさというようなところで、例えば水を抜いた時の樋など、水の出入りの所を見なさいとか教えていただくとかそういうようなことがあれば、親しみやすさが出てくる気がしますね。

萬谷:大人の人と子供の人とそもそも関わるようになる動機が違うんだと思います。大人が関わるようになる動機と、子供が興味を持つのが何かというのは少し違ったりするかなと思うんです。大人の人に関わってもらったりするには、今おっしゃったような仕組みがあったら、マンションでも自治会だったら順番に役が回ってくるみたいな。一回やってたら大体マンションの中がこうなっていたのかとわかって親しみがでてくるということがあるのかなと。

赤木:あえて、ため池サポーターなんて言う、17号池ため池サポーターとか西島大池ため池サポーターとか、どこでもサポーターが流行りですから。例えば、まちづくりにおいても応援隊とか、何々サポーターとかいうのが結構ありますから。サポーター募集って。なんでもいいですから。皆さんができることをできる時にできる人がやってくださいというのもありますから。ため池サポーターというのもいいかもしれません。クリーンキャンペーンもその一つなんですけど、それ以上に進んだものがあればと思います。

萬谷:サポーターとかいうのはないですよね?

司会:東播磨では、ため池サポーター制度があります。県民局に登録してるんですけど、その都度その都度声がかかってとかいうわけじゃないんですけれども。

赤木:最近ではコウノトリの情報や、「お池リンピック」とか含めてあります。

萬谷:17号池サポーターではなく、全体のサポーターですか。

赤木:はい。

萬谷:ため池サポーター17号池サポーターチームとか。

赤木:水利組合さんや農会さんが自分たちがやることの中で、これは一般の人もできるの違うの、やってもらえたらなというようなことがあってもいいかもしれません。クリーンキャンペーンだけでいいのですよとか。いっそ草刈りもやってよとか。

萬谷:そして池の水が掛かっているところの田んぼで出来たところのお米を後でもらえるとか。そういうのがあったら実感があって、役立ったなみたいな。

赤木:金ヶ崎水利組合さんに「亥の池」という国道筋のため池があるのですが、そこのキャンペーンの時にはお米がいただけます。あるいは野菜がいただけるとかあります。キャベツとか。そういうようなところもあります。

萬谷:そういうふうにやっぱり義務的にかかわるっていう事ではなくて、段々、段々親しみがわく。

工藤:この水でこれができるんだという。循環やつながりが実感できるとその中に自分も入っているんだという事が実感できるといいですね。

ため池の環境と景観保全について

司会:二つ目のテーマ。地域の環境保全と景観形成についてという管理が行き届かなくなったため池問題とか外来種の侵入とか、ため池を取り巻く環境が近年問題になっていますけれども、このことついて意見を伺いたいと思います。環境保全景観が専門の工藤先生がこれまでのワークショップでの経験などを踏まえながらお話し願います。

工藤:環境保全の目に見える結果が景観なので、そんなに分けては考えていないんですけれども、やはり、うちの学生も外来種駆除に去年参加させてらったんですけれども、外来種とかは非常に果てしないなと。今年、また増えていますよね。非常に頭が痛い問題で、本当に根気強くやっていくしかないのかなというふうに思っています。

萬谷:天満大池周辺では外来植物のナガエツルノゲイトウの侵入により、アサザの生育が脅かされ非常に大きな問題となっています。ナガエツルノゲイトウの駆除のため、学識者の協力を得た調査を実施しています。また、行政も協力し、定期的な駆除活動を進めています。現在、天満大池の上流に位置する新仏(しんぶつ)池では改修工事を実施していますが、これに合わせて、遮光シートを使ったナガエツルノゲイトウの駆除に取り組んでいます。その他、南あわじ市にある白木谷池(しらきたにいけ)では絶滅危惧種「ガガブタ」の保全を行っています。高砂市の弟池(おといけ)では改修工事にさきだちフナやコイなどの在来生物の引っ越し作業を行い、在来生物の保護(生物多様性の保全)に役立てました。

工藤:やはりため池の風景は、景観というと分かりにくくなるので、管理されなくなると、荒れてそれは悪だ、じゃぁ、廃止だというような簡単な方程式には入れてしまいたくないなと思っています。やはり人が自然と長い年月の間、相互作用を積み重ねた結果として、出来ているものが二次的な自然と呼ばれるもので、その目に見えるものが景観だというふうに思っています。きっと兵庫県のため池はとても迫力のある景観で風景を持っていて、私も大好きなんですけれど、池の中に入った時の感覚、空がすごく大きく見えて、堤防に囲まれた風景も好きですし、堤防の上から見る「いなみ野大地」の風景というのも大好きで、本当に大地と共にあるんだな、この土地はということを実感させられるんですけれど、そういうものが、住んでいる方、ずっとため池を管理されてきた方にはとても普通のものなんですよ。何が珍しいの?普通に池はあるものですよ。いや、ほかの所にはないんですよと。どこでもそうなんですけれど、農村の景観というのは、人が自然と関わってかく乱することで非常に豊かな生物相を作り出して美しい風景ができあがるので、客観的に、他者から、初めて見た人とかそういう風景に慣れてない人から見るとすごく美しいんですけれども、管理している方は、毎日見ているわけで小さい時からあるわけで、こんなに地図に池があるところって、ないんですけれど、普通なんですよね、やはりこの地域の方にとっては。それが普通ではないんですよと、「ただならぬ普通」と私たちは読んでいるんですが。非常に価値があるものだということを、一度外の目線、ちょっと違う、普通だと思っていたことが特別なんだよっていうことがもう少し広まっていって、守ろうという気持ちにつながっていくといいなと思っています。

赤木:いろんなイベント的な行事、例えば、オニバス観察会であるとか、クリーンキャンペーンもそう、「かいぼり」もそう。やはりこれらは楽しいというものにつながっていくのではないか。逆に楽しくないとなかなか続かないと感じます。私の経験からすると、2000年に明石に移ったんですけども、その前に西宮に住んでいましたので2,3回JRで往復して魚住で家を探した時に、大久保を出てから魚住までの線路の両側のグリーンっていうのは非常に印象を受けました。田舎に住んでいて、都会に出てきて、西宮から来ますと、大久保駅を出るとまさに農村的な風景、ため池も含めて良い所だと印象があります。以前の経験が何十年後かに実現しているのだということがあるかと思うんですけれども、そういうのが一つあります。今回ちょっとJRの新駅の問題等で、少し波風が立つような形になっておりますけれども、僕のこの20年では一番景観としての印象があるということ。先ほど申し上げました、レンコン掘りなんていうのは、現実に掘るところ、商売として掘っているところはテレビなんかで見ることはあるんですけど、皆さんがため池の中に入っていって、自ら鍬とか持って収穫されているというのは、正直言って驚きました。僕も一回だけ入ったんですけど、次からはあきらめました。あれはしんどいです。若い人じゃないとできないんで。これはもう大変だなぁというのはあります。

工藤:毎年、学生が喜んでやっています。(笑)

赤木:楽しさが自分に返ってくる面っていうのが、結局、環境保全につながっていくんかなぁという気はしますね。仮にいろんな写真なんかを他所のやつを見ていると、僕はため池よりも用水路の方がより印象を受けますね。というのは、用水路を歩いたり、自転車で追いかけたりできるので、そういう面で僕はため池よりも用水路の方が好きです。

萬谷:私、実は、大学では雑草学研究室にいまして、草なんですよ。めちゃくちゃ増える草とかあるんですね。全国的にもダムの中で増えちゃって困っているホテイアオイとかあるんですけど、めちゃくちゃ増えるんですよね。一定増えたら、例えばセイタカアワダチソウ、あれも一旦グワッと増えたんですけど、かなり減っているんですよね。やっぱり変遷ってどうしてもあって、バリアを貼るってできないので、長く接しいてるとなんとなく分かってくるんでしょうけど、なかなか長く接する経験ってできないんで、水路でも写真を撮ってずっとためていくとか、ため池も写真を撮ってためていくとか、そういった変遷写真などができたら見せることができるのかなと今のお話をお聞きして思ったんですけど。子供らの写真コンクールをするとか。

赤木:絵のポスターはやっています。

萬谷:大人の人って食べたりとか、子供もそうですけれど、接するきっかけというのがちょっと実利みたいなところもある。子供って瞬間の感動みたいなのがあると思うので。例えば写真を撮って賞をもらったりとか、絵を描いて賞をもらったりとか親しみが増えて、そういう人が20年30年経って、ちょっと今日掃除やけど行ってみよかってそんな繰り返しなんかなと思ってみたりするんですけど。

赤木:こないだ新聞で見たんですけど、高砂の北浜小学校で、1年生から6年までため池の学習をされているというのは正直びっくりしました。モデル事業ということになっていたようですけど、我々の明石であれば3年生が環境学習という事で、髙岡東であればため池の方とか、あるいは江井島であれば海岸の方とか色々分かれているわけですけれども、そういう点でため池という部分で学んだ方は、何十年か後には、ため池に親しみを持って接してくれるだろうと思う。

工藤:子供はやはり環境学習をすごく素直に取り入れてくれたり、興味がある子は生き物や魚が大好きだったり、植物が好きだったり、虫が好きだったり、子供の頃から身近に感じて関わってもらうというのは、とても大事かなと思います。

次世代を担う人づくりについて

司会:三つ目のテーマなんですけれども、「つなぐ」というのは人づくりが必要と言われていますが、この辺についてもご意見をお聞かせください。先生の所は毎年生徒が変わりますし、赤木さんの所は清掃志隊も新しい人が入ってこられたりというのがあると思います。なかなか難しいですが、次世代の人づくりのテーマにお話をお願いします。

萬谷:東播磨・北播磨では、地域の財産であるため池や淡山疏水、東条川疏水の歴史、築造時の苦労、水の大切さなどを伝える副読本「水をもとめて」、「遠い水の路」を作成し、小学校へ配布することで教育カリキュラムに組み入れた授業も実施しています。小学生への教育は、室内での説明も大切ですが、子どもたちにとっては、実際に現場でため池や疏水を「見て」「知る」実体験をあわせて行うことで、より高い教育効果が得られると考え、屋外の学習会をセットで実施しているところです。僕は実は平成17年、18年ぐらいに子供たちに農林水産業体験をさせるという係にいたんです。そういう事業がありまして、魚とか子供たちって動くものが好きなんです。だから漁師さんの地引網をやりましょう体験で、採れた魚をさばいて食べましょうとこういうようなセットで子供たちを集めて体験してもらうのですけど、地引網って、楽しくてやるんですけど、魚の方は全部料理を子供たちでしてもらったんですけれども、調理師の免許を持っておられる漁師さんがおられるんで、頼んでボンと大きい魚を置いて子供ら30人40人を前にして包丁を持って、今からいくぞとやってくれる。子供たちの視線がすごいですよ。集中しているんですよ。そんなことはきっと記憶に残っているのだろうなと。一方で農業の体験をさせるのはすごい難しかったですよ。3回シリーズで黒大豆を植えましょう、土寄せしましょう、最後は収穫しましょうで、収穫しましょうは最後食べましょうがつくんですね。この時は盛り上がるんですよね。植えましょう、土寄せしましょうなんて全く盛り上がらない。面白くない体験みたいになっちゃって、体験させるってのは、結構ため池でどんなことができるかってやっぱり動くものがいいのかなと思ったり、魚とかいたら子供たち喜ぶやろうなぁと思ったりします。食べるってことが組み合わさったら子供らにはさらにいいやろうなと思いますね。

工藤:実体験は大切だなぁとしみじみ思います。やっぱり難しいとは思いますが、何が変わったのかなとは思うんですけど、身近にあっても体験できない時代になったんだろうなと思っているんですね。私が先ほど最初に農村部で育ったってことをお話しましたけれど、やはり土を触って育ってきたので、葉っぱが好きで、祖父が育てている野菜とかを勝手に食べるのでマヨネーズを持って出ていくなと怒られて、野菜が好きだったんですけれど、農業の体験ではなくて、”農”の体験、”業”じゃなければいいんじゃないかという気がするんですけど。”業”じゃなければやっぱり楽しかったような気がするんですね。虫を捕ったり、葉っぱを勝手に採るとか、”業”としてあり得ない話なんですけど、勝手にトマトを採って食べているんですけど、やはり本当に子供の時の体験が、大切だなぁと実感しています。うちの学生も毎年行っていますけど、全ての学生がそういうことが好きなわけではなくて、話を聞いていると魚も泥も絶対に嫌ですといったとてもものすごい抵抗感がある学生もいる。あんな素敵な事ってないじゃないって私は思うんですけど、それは身近にあっても体験をできずに育つ子がものすごくいるという時代が、50年ぐらい続いてしまっているんじゃないかと思っています。私は子育てしているもんですから、30代後半から40代後半ぐらいのママ友さんとかパパ友さんとかと子供と一緒にキャンプで自然の所に遊びに行くんですけど、私が一番虫や魚を捕ってくれる、子供たちにとって私は結構ヒーローなんですよね。カエルがいたというと捕ってくれる、みたいな。何が違うかというと子供の時の体験なんです。私には見えるカエルが他のパパさんたちには見えない。決して自然が嫌いじゃないんですけど、家でカブトムシを育てているんですけれど、見えない。それでヒーローなんですけど。子供たちが虫を捕れ、魚を捕れと言ってくるんでずっと川に入っているんですけど。他のお父さんたちは、メダカを見つけれられないんですよね。やっぱりため池で百戦練磨いろんな魚を網で捕れる範囲だったら捕れるので捕ってくれる人いう刷り込みがあって、それは何が差があるかっていうと、小さい時の体験以外何の差もないと思う。そこの差だけでこれだけの差になるんだというのを実感していまして、やはり次世代を担う人づくりでは、子供の時から土を触る体験をして育ってほしいなぁと思っています。これは、ため池を守ってほしいから土を触ってほしいのではなくて、子供たちが育つ過程において大地を触って、大地と接して、自分達を支えてくれている環境がここにあるんだということを感じてその循環の一部だということを実感して育つ事は非常に大切な事。親御さんがまず理解していただくことがとても大事だと思っています。いろんなマークや看板等をデザインさせてもらっているんですけど、やはりより分かりやすく、伝わりやすくして、子育てをしている方々にも子供が生き物、魚や泥を触ることっていうのが非常に育つ過程で大切なものなのだということを実感していただきたい。赤木さんも「ため池ジャンパー」を着ていただいていますけれど、みなさんのつながりを持つシンボルのような形で連帯のマークになっていったらいいなと思っています。よりわかりやすくマークやいろんなデザインによって見える化をする、サポーターの方なんだなとか、ため池に関わっている方なんだな、今日はクリーンキャンペーンをやっているんだなというようなことがより分かりやすくなるといいなと思っています。更にインターネット等を使ってよりつながる時代がもっともっと進むんじゃないかと思っているんですけど、動画とかテレビの「池の水を抜いてみた」がなかなか人気で、それがらみで「かいぼり」するんだという連絡がきましたけれど、そういういろんな新しい技術も取り入れながら新しい次の世代に向かって人づくりやそのつながり作りをできていったらなと思っています。

赤木:一緒にため池清掃に入っていて気になるのは、水利組合さんとか、農家さんの子供なり、お孫さんっていうのが意外と少ないことです。おじいさんが孫を一緒に連れてきて、ほっといたら危ないので、その辺を例えば僕らが面倒をみてくれと言われたらちゃんとみておくとか。というようなことでお孫さんに声掛けをちょっとしてくださいとか、思い付きで言いましたけれども。

工藤:「お孫さんと来ようキャンペーン」のようなものがあるといいですね。

赤木:僕はスクールガードという明石で子供の見守り活動をしています。学校には、誰々のお孫さんって子は来ているわけです。いざ、ため池キャンペーンとなると、例えば亥の池となると、その子は来てないもんですから来たらいいんじゃないのと思ったりするんですけど、おじいちゃんは危ないからかなと、きちっと見守れないからと、目を離しちゃうから危ないかなとご判断されるのだと思います。おじいちゃんがいるから、大人がいるからやろうかなとなったらいいなと。

萬谷:なんかそういうのって今どこかあるんですかね。今思ったのは結局、何とか池水利組合とサポーターさんがやっていて、皆さん家族連れでどうぞとか、役割分担とかしてあるんですか。

赤木:清水新池の場合には、自治会さんとか高年クラブさんも見えますからそうなった場合は子供も一緒に。自治会がらみで、高年クラブがらみということになると仮にご親戚でとかまとまる場合は子供が参加することもあります。親が子供を連れてくる場合もあります。親子でどうぞとか、おじいちゃんとどうぞっていうのは、発信はできると思います。

萬谷:受け入れるっていうサポーターの方がおられるのであれば。

赤木:安全の問題がありますから、あまりその辺は。

萬谷:草刈りも本当は危険な作業で、石が飛んだりしますからね。サポーターに子供を見るという業務をいれたらどうですか。

赤木:簡単にサポーター、サポーターって言っていますけど、正直言ってなかなか集まらないですよ。まちづくりの中で、何でもいいんですよ、お祭りでちょっと手伝ってくださいとか言っても、現実は難しい。それが段々と僕らでも5年前はまちづくり協議会が正式にスタートする年は新しい方を募集しますとしたら50数人みえたんです。いろんな自分の興味のある部会の方に行っていただいて。今はそういう方が定着されている方は当然なのですが、離れて行ってしまわれた方がいるので新たに募集しますとなると来ないです。もう一人か二人しか来ないです。そういうような時代になっています。高齢の人の働き方も変わってきていますから、以前は仮に60が定年なら定年と、今は70まで働きますという形になっているので、なかなかこの辺が難しいです。

萬谷:学校の同窓会でもなかなかやってくれる人がいないので、そういうのと同じことが地域でも起こっているってことすね。

司会:言い足りなかったことはありますか。

赤木:明石高専さんでため池群の看板を作ってくれています。個々の池の名前っていうのは、水利組合さんに任されているのですか。名前がなかったらため池はため池ですけど、名前があって多少の親しみが出るので。明石の場合は、名前が書いている看板のあるため池が少ない。明石高専さんの方でため池群ということで管理されている池を一つの大きなボードで書いて立ててくれています。個々の池にはやはり名前がない。

司会:名前がないというのは?

赤木:池の名前。

工藤:看板に名前が入ってないってことですね。

赤木:一人で来きたら危険とか危ないとかの看板はありますが、池の名前の看板がない。

工藤:ひとつひとつにため池看板がないという事ですね。水利でまとめて一つとかで作ったので、ため池ごとには立ってないです。この池は何池ですっていう看板の立ち方をしてない池があります。

赤木:その点、稲美町とか加古川の方は、ありますね。明石の問題なのですかね。それは気になっているんです。

工藤:水利で一個みたいな形で、名前を示す看板がため池ひとつひとつには立ってないということです。

赤木:名前は親しみになる一つの要因です。

工藤:まとめて一個になっているので。

赤木:大久保町の西脇でコウノトリが、5羽とか6羽とか来たと。一瞬、皿池っていう名前が多いですから、西脇の皿池かというとピンとこなかった。だいぶん南の方のイメージがありましたから。地図を確認して北の方だなというのがわかったのですけど。

司会:名前を知っているということから興味につながっていく。

工藤:看板がひとつひとつあれば、これは何池とわかるけどっていうことですね。住んでいても名前が伝わりにくいということですね、今は。

萬谷:せめて周辺に住んでいる人には名前がわかった方が親しみわきますね。

司会:県民局単位で看板を設置しようという事業も少しずつやっています。なかなかお金もかかるし、数も多いので一度にというわけにはいかないですが。

工藤:予算の問題ですね、きっと明石は。管理主体ごとに作りました。

司会:先生に作っていただいた看板はお洒落なデザインで、わかりやすいですね。

工藤:かわいく、わかりやすく馴染みやすくはしているのですけど。

司会:我々が作る事業看板は、県営路線とか団体路線とか事業主体とか入れるのですけども、こんなの全然意味ないと言われましたよね。

工藤:あまりマニアックなことを書いても伝わらないので。

司会:今、篠山で看板にQRコードを入れて読み取れるようにしようということを検討しています。

工藤:名前が伝わるだけでも意味があるのでしょうね。ひとつひとつ名前をちゃんと伝えるって大切ですよね、確かに。

赤木:あと一つ。ため池清掃志隊で2年前、淡路島県民局に小田さんがおられた時で、段取りしていただき、淡路のため池にバス釣りをされるプロ的な人が大阪から来られて、その方が池で釣りをするので代わりに池が汚れている部分は清掃をしようと2年前の12月に我々4人で淡路に行って一緒にため池のクリーンキャンペーンをしたエピソードがあります。そういうことがいろいろとやっていけたらいいなという想いはありますが、なかなか正直いって前に進んでいません。

萬谷:出張サポーターみたいな?

赤木:一緒にね。海岸清掃ってのいうのがあって、これは県とか市とか国とかの管理になるわけですが、明石の場合海岸で月に1回とか。自治会なり、海岸清掃するグループがあるんです。江井島には「海と子供を愛する会」っていうのがあって、月一回クリーンキャンペーンをやっているんです。もうそれが20年以上続いている。明石高専の学生さんなんかもやっていたのは僕も記憶にあります。そういうグループと一緒にやれれば、池も海もあるいは川もと。段々歳を取ると難しくなりますが、海岸の清掃は結構面白いです。そんなようなつながりで池も海岸も道路もとなればいいかなと思ったりします。

萬谷:縦と横みたいな話ですね。

工藤:お掃除されているという話なのですが、すごく大事な事だと私は思っていて、景観を守るのはどうしたらいいですかって聞かれたら、皆さん一緒にお掃除してくださいって言っています。お掃除を続ける。まずは管理と、そこまで関われない人はお掃除をするという事がすごく大事で、掃除をすることで色々と理解できたり、それが発展したら草を刈ったりとかなるんですが、お掃除というのは管理の第一歩です。環境を守るのも、風景を守るのもまずはお掃除。住んでいる人が一番簡単にまずできることは掃除だと思います。

司会:次世代につなぐことが進んでないというそのあたりを。

萬谷:メダカのコタロー劇団というのがあるんですが、県が推進するため池保全県民運動の趣旨に賛同し、ため池保全について、子供たちへの啓発を自発的に展開しています。SNS「メダカのコタローLINE放送局」もあり、送られてくる写真を見ていると、子供たちが楽しそうにしています。劇団の取組みにより、ため池に関心を抱いた子供たちが、かいぼり体験などの実体験から将来、ため池保全に携わるような仕組みができればと思っています。あと、ため池から少し離れてしまうかもしれないですけど、農林水産業体験を子供たちにしてもらうってことを考えて色々学校とかにも、小学校、中学校と取組みをするのですけれども、指導する先生がそもそもあまり親しみがない場合がある。その場合はそこで止まる。逆に、先生がすごく、例えば鹿の角だとかグッズがあるので授業で使うならどうぞと言ったら、あれも貸してこれも貸してと、一週間ずっと貸しといてっていう風になると先生は多分週に2回ぐらい子供たち色々話をするんですって。赤木さんたちみたいなサポーターがいてくださってこそ、伝わっていくものってあるので、そういう伝えていってくれる人も大切だと思う。学校の先生がそういうことをしてくれたらいいとなるんですが、学校の先生もいろいろ興味があるので、一色に染めることはできないから、出来る人がつないでいったらいいのかなと思います。そういう人たちが少しずつ輪を広げていくために、研修会とか地道にやっていただいてちょっとずつ輪を広げていくってことが結局次の世代につながることになっていくのかなと思ったりします。

司会:親しみやすくとか、知ってもらうとか、興味を持ってもらうとか。

赤木:中学生で「トライやる・ウィーク」がありますね。県で始められてもう20年くらいになりますか。今、次世代でっていう事で、いろいろやっても結果がわかるのが何十年後ですよね。例えば今「トライやる」でされているようなあの子達が、20年経ったあの子たちがどんな大人になっているのかなってデータがあれば、ないのでしょうけれども、今我々がやっていることも何十年という単位でしかわかりにくいですよね。

司会:「トライやる・ウィーク」もため池の方で受け入れたりしていたんですが、水質の検査とかをしてもらったりとか、いろいろため池のことを調べてもらったりとか考えて取り組んでいたけれども、中学生だから物を売ったりお店屋さんとかが人気で、なかなか難しく、結局職員の負担の方が多くて続かなくなった経緯があります。

赤木:結局どこにつながっていくのだろうかなと。ゆとり世代云々がありましたね。結局やめてしまいましたよね。何に表れたのと、学力云々と言われていますけれども、いい面が表れてないのか検証できないのかと。結局、学力落ちたから、環境学習が増えたからとか、確かに学力が落ちたけれども10年、20年経った後の子供たちがどうなのかが知りたいですね。

萬谷:県としては、このようなため池や疏水に興味を持った子どもたちが、より深く理解してくれるように、これからも効果的な学習方法などについて検討を重ね、地域の皆さんや学校と一緒に実行していきたいと考えています。