地域のため池を探ろう!

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黒石ダム(丹波篠山市)

2021年11月16日

(1) 所在地 丹波篠山市今田町黒石
(2) 型式と規模
     型式 中心コアー型アースダム
     堤高 29.4m
     堤長 170.0m
     貯水量 606,000㎥
     満水面積 8.3ha

(3) かんがい地域とその面積 今田町の黒石川、四斗谷川の流域水田337ha、畑60haの耕地399.0ha
(4) ダム着工までの経緯
 黒石の谷に、「ため池築造」の声は先祖代々古くからあった。今田町の主用水源である東条川支流の四斗谷川及び黒石川の水量が少ない為、明治時代から度重なる干ばつが記録され、とくに大正13年の全国的な大干ばつは稲を枯らし、田畑は荒れ放題の状況であった。村の有志が集まりため池づくりを何度も計画したが、実現しなかった。そこで水のほとんど不用な葉タバコが広く作られた。戦後の食糧難時代には、“一合の米でも多く”と水を取り合い村民同士が争いを繰り返し、田の水口に徹夜で水番をするほど水に悩んだ。
 戦後、多紀郡総合開発計画が県によって検討された結果、同群東部で広域的篠山川沿岸土地改良事業が昭和41年に県営かんがい排水事業を着手した。これと同時に、今田町の水不足解消の悲願であった黒石ダムは、今田地区県営かんがい排水事業として実施されることになった。
 ダム着手までの経緯は次のとおりである。
 〇昭和44年 全体計画に着手
 〇昭和46年 全体計画書が農林水産省で採択された
 〇昭和47年5月1日 全体設計が承認され、ダム本体、施工計画の詳細設計に着手
 〇昭和48年12月   ダム工事に着工
(5) 黒石ダムの設計施工監督は、昭和48年5月、現地に設置された篠山土地改良事務所今田農業水利事業所で行われた。
 堤体断面は、付替道路、余水吐、仮排水路掘削時の発生ロックを有効に利用することとして、上流面法護工及び下流部にロック材を最大限使用する工法とした。
 ダム工事は、昭和48年12月、基礎掘削に着手、50年2月4日ダムの定礎の式が挙行され、約1年3ヶ月後の51年5月堤体積約145000m3の黒石ダムが完成した。本体完成後、ダムの周辺整備に1ヵ年をかけ、52年5月28日、新緑の映える黒石の渓谷に、美しい雄大な黒石ダムの竣工式が、元県知事坂井時忠氏列席のもと住民歓喜のなかで盛大に挙行された。  参考に、黒石ダム及び附帯施設の規模(表1)、標準断面図(図2)を紹介しておく。

※ 本文は、「兵庫のため池誌」(昭和59年発行)第四編各地のため池築造の歴史から一部加筆訂正して転載しています。