牧野大池と耕地整理事業
2022年05月05日
牧野大池は、牧野耕地整理事業地区内への灌漑用水の確保を目的として造られた溜池です。
大池のできるまでの牧野は、耕地面積五十町歩余の内十二町までが畑でした。幾つかの溜池や妙見の谷水を利用した耕地が殆どで、日照りが続くと雨乞い祈祷に縋(すが)ったり、あちこちで地下水利用のための鑿井(さくせい)や穿鑿(せんさく)した掘抜き出水等の工事が続けられてきました。
大正二年には、この地に大池の前身となる溜池造りが試みられましたが、施工等の失敗より貯水に至らず、誰引き継ぐ者のない状態になりました。
こうした状況を憂い、「安定した用水の確保と開墾による増反増益を図り、村の基盤を創ることが村百年の計」と説く柏原留造氏を中心とした八名の方々の、再起への強い熱意と先見によって、牧野耕地整理組合が設立され大池等の壮大な工事が始められることになりました。
完成までの間には、冒頭の予想以上の莫大な工事費に手を拱(こまね)き途方に暮れる日々が続いたり、中途、多可銀行の倒産によって工事が一時中止されたこともありましたが、折からの国の「米価の安定と開墾を奨励する法令」や県耕地整理組合連合会神田技官の力強い指導を受けることができ、併せて、先人先輩皆様方の不屈のご努力と強い信念によって幾多の苦難を乗り越え、三十年間に亘る大土木工事を完成に導かれました。
■耕地整理事業の概要
計画区域 耕地、山林、畑 計九十町八反
工 事 大池築堤、基幹水路、開田、開畑、道橋等
総事業費 三十一万七千百十五円(現在価格約8億円)
■大池の概要
所在地 牧野字入角八百十七番地の二十
工事期間 起工 大正十一年一月十三日
竣工 昭和八年三月
形式 フィルダム(ハガネ幅四メートル 高さ十三メートル)
堤 高 二十三メートル
堤 長 二百三十四メートル
堤体積 二十一万立方メートル
満水面積 六万八千平方メートル
水 深 十六、四メートル(泥樋以下の水深八メートル)
貯水量 三十五万立方メートル
工事費 九万六百円(人夫数五万四千二百五十三人)
平成十六年三月吉日 建立
【備考】牧野大池の堤体に国土地理院の四等三角点が設置されています。