有野大池
2021年04月23日
(1) 所在地 神戸市北区有野町有野
(2) 型式と規模
型式 中心刃金式土堰堤
堤高 22.7m
堤長 102.0m
満水面積 2.2ha
貯水量 219000m3
(3) かんがい地域とその面積
神戸市北区有野町、道場町、八多町の3町にまたがる有野川、八多川に沿った南北に帯状の507haの水田であった。いまは、有野川沿いの180haをかんがいしている。
(4) 築造の経緯
大池は関係地域の補助水源として、有野川支流堀越川に昭和16年から28年にかけ、県営事業で建設された。
受益地域の水利は有野川及び八多川を用水源とする井堰がその主体であり、補助水源として山間につくられた小ため池に放っていた。ところが、河川の流水が乏しく、かつ小ため池も設備が不完全であるため、1ヵ月も干天が続けば干害を破ることがしばしばで、用水対策は関係地域農民の悲願であった。
昭和15年、当時の旧有馬村の村長西浦勇吉氏は有野大池の築造を提唱し、社会に図り大池の設計企画を立て、県へ強く要望した結果、県営かんがい排水事業として昭和16年より4ヵ年計画(総工費予算57万円)を以って新築工事に着手した。
ところが、昭和16年12月に勃発した太平洋戦争により、資材の入手難並びに労力の不足等の急変情勢のため、工事も遅れがちであったがそのうえに、昭和20年10月の水害により築堤の一部も流失する等、一時工事中止の憂目に遭遇した。
敗戦後の22年より再出発を図り、28年に至りようやく完成した。
竣工を祈念して地元民の手で湖畔に桜が植樹され、今では春になると美しい桜花が美しい水面に映える美しさにあやかって、地元では「桜池」と呼んでいる。
(5) エピローグ
裏六甲有料道路で六甲トンネルを抜けると、右側に美しい有野大池を眺めることができ、四季折々の湖面はドライバーの心を和らげる効果も大きいだろう。
(注) 1、参考資料 旧有馬郡有野村誌
※ 本文は、「兵庫のため池誌」(昭和59年発行)第四編各地のため池築造の歴史から一部加筆訂正して転載しています。